定員割れの大学・専門学校が増加する理由とは?検討すべき対策も解説

「入学者の定員割れが続いており悩んでいる」「これからどんな対策を講じていけば良いか分からない」

そんな悩みを抱えている広報担当者の方も多いのではないでしょうか。

18歳人口の減少やコロナ禍、不景気など、さまざまな要因によって定員割れしている大学や専門学校が増加しています。

このような状況下で教育機関が存続するためには、定員割れの理由や対策方法を知ることが重要です。

この記事では定員割れを改善したい教育機関の関係者に向けて、定員割れの現状や増加していく理由を解説します。最後まで読めば今後どのような対策を検討すべきかも分かりますので、ぜひご覧ください。

目次

定員割れの大学や専門学校が増加

河合塾が2021年10月に公表した内容によると、2021年度は私立大の定員割れ大学の割合が46.4%まで上昇したことが分かっています。

志願者数は2020年度より約53万3,000人減少した383万4,862人です。受験人口自体が減少している上、新型コロナウイルスの影響による経済状況悪化などで、出願校を限定した受験生が例年より多かったことが要因と見られています。

定員充足率は東京・京都・大阪など都市部はほぼ100%。一方で北陸・九州では100%を割ったところもあります。

さらに多くの学部系統で、倍率が1.0ポイント以上低下しています。定員充足率は特に歯学系(75.8%)、薬学系(88.6%)の低さが目立ちました。

上記のように教育機関の定員割れは加速している状況です。早急に何らかの対策を講じる必要があるといえるでしょう。

定員割れは今後も加速?3つの理由を解説

定員割れが今後も加速していくと考えられる、3つの理由について解説します。

①18歳人口の減少

文部科学省の資料によると、2018年以降は18歳人口の減少に伴い、大学進学率が上昇しても進学者数は減少していくと予測されています。

2040年には18歳人口88万人のうち、約51万人が大学進学すると予測されています。進学率だけ見ると57.4%と高く思えるでしょう。

しかし、2017年の大学進学者数が約63万人とピークであった時と比較すると、約12万人も減少していることになるのです。

上記の結果から、18歳人口が激減することで大学や専門学校の定員割れも加速すると考えられます。

②景気の悪化による受験生の動向の変化

受験生の動向の変化も理由の一つに挙げられます。景気の悪化やコロナ禍を踏まえたうえで、大学・専門学校選びをする受験生が増えることが予想されているのです。

特に外国語系や国際系の大学は、卒業後に活躍できる業界が疲弊している状況もあり避けられやすいでしょう。

また人文系(法学部を除く)も不景気のなかで安定した生活を送るための職業には就きにくいことから、敬遠されていく可能性が高いです。

さらに、定員割れが増加している入試動向を把握している学生は、受験大学を絞った上で「それだけ入試のハードルが低くなるから」とターゲットを高ランク大学に定めるケースが多くなると考えられます。

一部の人気大学・学部以外をのぞいて、私立大学や地方大学、専門学校の定員割れが加速するでしょう。

③オンライン型教育の発展

コロナ禍で次のようにオンライン教育が推進されたことにより、今後ますます活性化していくことが予想されます。従来型の教育を提供する大学に大きく影響すると考えられるでしょう。

・オンライン教育システムの進化

・オンライン教育を推進する教育機関への補助金制度が展開

例えば「MOOCs」は、世界トップクラスの大学の一流教員の講義を無料で受講できる学習サービスです。修了すれば修了証書も発行されます。日本でも2014年に「JMOOC」が開設され、現在は143万人が学習しています。

受講者数はまだ多くありませんが、無料で学習できてインターネット環境さえあればいつでも大学の講義を受けられる容易さは大きなメリットです。経済的に困窮状態にある学生でも、意欲があれば大きく成長できるチャンスがあります。

従来の通学がメインの大学教育や、高額な学費といった概念が変わるのは、学生にとって大きなメリットといえるでしょう。

今後もこのような3つの理由で、教育機関の定員割れは深刻化する可能性が高くなります。そのため、できる限り早く対処していく必要があるでしょう。

定員割れの大学や専門学校が検討するべき3つの対策

ここまで読んできて「では定員割れしている現状から、どんな対策をしていけば良いんだろう?」と思われた方も多いでしょう。ここからは教育機関が検討するべき3つの対策について解説します。

①教育内容を改善する

アクティブラーニングや情報通信技術(ICT)の活用など、新しい手法を取り入れて教育内容を改善していくことが必要です。

アクティブラーニングを導入している一例として、岡山大学工学部機械工学科の取り組みが挙げられます。

1年次から大学院までアクティブラーニングを含んだ科目を配置している当学科。特に注目すべきは2年次から始まる「創成プロジェクト」です。

与えられた課題に対して学生自身が多くの解を生み出す訓練をし、レポートやプレゼンテーションにまとめて発表します。また90分という短時間のなかで、グループ全員で協力してアイデアの創出から必要な物品の購入~組み立てまで行う授業もあります。

リーダーシップや課題探求力、発想力などの能力を伸ばしつつ、「強みを活かして独自の製品を生み出す」といった企業戦略も身につけられるようになっているのです。

また内閣府が提唱した日本が目指すべき社会の姿「Society5.0」では、AI技術が発達し多くの分野がAIに取って代わられるといわれています。

さらに学習到達度調査の結果によると、日本の大学生は「正しい情報を探し出す」「質や信憑性を評価する」「自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明する」といった能力が不足していると考えられています。

そのため、さまざまな分野でAIやデータを活用し展開できる人材や、自ら価値を見つけ出せる好奇心・探求力を身につけた人材を育成する教育プログラムが求められるでしょう。

②リカレント教育を拡充する

大学や専門学校に入学する年齢層を増やし、リカレント教育を充実させるのも対策の一つです。

学校基本調査のデータによると、2020年度の学部入学者年齢は約94%が18~19歳でした。アメリカやスウェーデンなど諸外国の入学者の平均年齢と比較しても、日本は圧倒的に20歳以上の入学者数が少なくなっています。

したがって、学生の年齢層を厚くする教育システムを構築することに成功すれば、よりこれからの変化に強い教育機関を維持できる可能性が高まるでしょう。

さらにリカレント教育を社員に受講させたい企業側の意向を知ることも重要です。

経団連が企業にリカレント教育に関するアンケート調査を行った結果、83社のうち約9割が「リカレント教育を社員に受講させたいと思っている」と回答しました。さらに、リカレント教育プログラムに強く期待していることは「特定職種の実務に必要な専門知識・技能の習得」でした。

また問題点として、「大学のリカレント教育の取り組みの情報を入手する方法が分からない」と回答した企業は約45%にも昇っています。

上記の結果から、企業の雇用のあり方や働き方をしっかり調査した上で、専門技術をより高めるプログラムを構築する必要があります。さらに教育機関の公式サイトやSNS等を通じて積極的に情報を発信していくと良いでしょう。

③独自の強みを強化する

大学や専門学校独自の強みを強化していくことも必要です。強みや特徴を充実させてアピールすることで、他の教育機関との差別化につながります。

強みを強化した一例として、埼玉工業大学の取り組みを見てみましょう。

埼玉工業大学では数年にわたり定員割れが続いていました。しかし、2019年4月に工学部情報システム学科にAI専攻を開設したところ、定員40人に対し681人もの志願者が殺到したのです。

AI人材の育成が求められる昨今において、AIの知識技術が習得できる環境を作り上げたことが打開策となったといえるでしょう。

また社会の変化に対応した多様な教育プログラムを実現するには、複数の大学や専門学校の人的・物的リソースを共有していく仕組みも必要です。

特に情報系のように成長が著しい分野では、人材育成を担える高い専門知識をもった人材が不足しています。そのため、教育機関の枠を超えて適切にリソースをシェアすることで、互いにより良い教育環境を作り上げることに繋がるでしょう。「競争」から「協働」へと方針をシフトするのです。

このように強みや特色を意識し、発展の方向性を明確化したり、他大学との連携を図ったりすることで定員割れを改善できる可能性が高まります。

まとめ

今回は大学や専門学校などの定員割れの現状や理由、検討すべき対策について解説してきました。

18歳人口の減少や景気の悪化、オンライン型教育の発展といった要因により、今後ますます定員割れが加速することが予想されています。特に無料で一流大学の講義を受講できるサービスの存在は、受験生の高等教育のあり方に対する価値観を変えていくでしょう。その結果、従来の教育方針を続けている教育機関に大きな影響を及ぼす可能性が高くなります。

厳しい状況下で教育機関が定員割れを改善していくには、教育内容を時代に合わせて見直すことが重要です。またリカレント教育を拡充させ、20歳以上の人口の入学者を取り込む対策も求められるでしょう。さらに独自の強みを強化し、他の大学や専門学校と協働してリソースを適切に共有する必要があります。

弊社ではより具体的な対策方法のアドバイスやセミナーなども行っております。ぜひご興味があればお問い合わせください。

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